認定支援機関 行政書士たいぞう事務所の小堀大藏です。
あなたの事業が成功するために何か役に立つ情報をできるだけわかりやすくお伝えしようと考え、このブログを書いています。
12月23日に「新たな借換保証制度(コロナ借換保証)の創設」が発表されました。この施策の検討された衆議院にある衆議院調査局中小企業金融政策研究会が論文を発表しています。「中小企業金融をめぐる現状及びポストコロナに向けた今後の在り方」(『RESEARCH BUREAU 論究(第19号)2022.12.31』)
この論文を今週は紹介したいと思います。今日は、「Ⅳ 評価」です。
【はじめに】では、「有識者へのヒアリング調査の結果等を踏まえて、現時点における支援策の評価を整理する。」とされています。
最初に1マクロデータ等からみた評価として、こと中における中小企業の財務等の動向として、収益性指標と安全性指標を使って分析しています。製造業、非製造業だけでなく、今回のコロナの影響が深刻だった宿泊業、飲食業サービス業についても踏み込んだ情報を提示しています。
これらのデータは、前年同期比によるものですので、絶対値と違い極端に下がった後の翌年は、すっかり良くなったようなデータとなりますが、そうではなさそうです。 借入金依存度は、「新型コロナ発生後に一時上昇したものの(製造業のピーク(2020年7-9月期):35.8%、非製造業のピーク(2021年4-6月期):36.9%)、足元ではコロナ禍前と同程度の水準にある。」と報告しています。
また、手元流動性は、「コロナ禍前の水準と比べて高い傾向にある。」「中小企業が今般のコロナ禍による売上げの減少や企業収益の悪化に対して、各種資金繰り支援策を活用し借入金を増加させたが、その結果、手元に現金・預金などが増えたことにより手元流動性が手厚くなっている現状がうかがえる。」と分析しています。
次に、専門機関等への調査ヒアリングの結果がかなりのボリュームで報告されています。
信金中央金庫 地域・中小企業研究所のヒアリングでは、「収益性・安全性への影響と政策効果」として、「実質無利子・無担保融資等の資金繰り支援策が資金調達を下支えした」と評価していることを報告しています。
また、「足元における中小企業の黒字企業の割合は50%を上回り、コロナ禍前の水準を回復…小企業も…改善傾向に…中小企業全体として業績が改善していることがわかる」としました。宿泊業を除き「おおむね改善傾向が続くことが見込まれる」としました。
また、各種アンケート調査についても支援策の評価を実施していることから紹介している。ここでは列挙にとどめる。
- 最近の企業動向等に関する実態調査(衆議院調査局経済産業調査室 2022年2月)
- 新型コロナウイルス感染症下における企業実態調査(経済産業研究所 2020年11月)
- 金融機関の取組みの評価に関する企業アンケート調査(金融庁 2021年6月)
- 新型コロナウイルス感染症の中層企業への影響に関する調査(日本政策金融公庫総合研究所 2022年5月)
さらに、先行研究についてもしっかりと触れられています。これも、列挙にとどめますが、興味深い内容があるので、後日違う形で原本に当たったうえでご紹介します。
- 植杉威一郎 一橋大学経済研究所 経済制度・経済政策研究部門教授(ゾンビ企業)
- 森川正之 一橋大学経済研究所 経済計測研究部門教授(生産性と支援策の利用)
- 星岳雄 東京大学大学院経済学研究科教授 (評点の低い企業に民間金融機関融資)
なかなか悩ましい課題について、切り込んでいることは、事実を確認するに必要な作業です。金融マニュアルから脱却して事業評価を通して、企業の審査をできる人材を養成しようとしていた矢先だったので、民間金融機関を叩くわけにはいきませんが、政府の100%保証のもと、多くの金融機関がリスクがない融資に、しっかり金利が保証される融資に乗り出していた事実は、立ち止まって考えるべき課題なのかもしれません。