認定支援機関 行政書士たいぞう事務所の小堀大藏です。
あなたの事業が成功するために何か役に立つ情報をできるだけわかりやすくお伝えしようと考え、このブログを書いています。
今日は、『東洋経済ONLINE 2023.10,26』でデービット・アトキンソンが書いた「経済衰退・少子化「非正規雇用が元凶」という俗説」~増えた非正規はほぼ「45歳以上の女性と高齢者」~をご紹介します。
最初に「非正規雇用の増加が諸悪の根源」という俗説という節で、「日本経済は1990年代から…約30年間にわたって経済が停滞し、賃金が上がらなかった原因について、…そのほとんどが、根拠の乏しい、いわゆる「俗説」だと考えています」と断じています。
「その中の代表的なものの1つが、「非正規雇用者の増加が諸悪の根源」とする説」で、「非正規雇用の男性は結婚率が低い。非正規雇用は増えている。だから、非正規雇用の増加は少子化に拍車をかけている」とも主張し、「非正規雇用を減らせば、結婚する人が増え、出生率も上がる」とまで言う人も少なくないようです。」と批判しています。
ちょっと待って下さい。先週、このブログで紹介した藤波先生の少子化の原因の一つに賃金の低下、非正規の社員の問題も含まれていた気がいたします。
確かに、正規雇用の社員の減少は続いているようですが「「正規から非正規への入れ替え」は限定的」であると指摘しています。
すなわち、「新たに非正規雇用者として雇用される人が増加したことに起因しているのが明らか」としています。になります。
上記のグラフを見る限り、正規雇用者は増減はあるものの1994年のピークから減少、他方、非正規雇用者は、ほぼ上昇の基調が続いていることがわかります。
「全雇用者は1988年に比べて1489万人増えたのですが、その内、非正規が1336万人で、増加者の89.7%を占めています。」と驚きの数値を発表しています。一体、その増加の原因は何かという疑問に次のように答えています。
「女性非正規雇用者が881万人と、全体の65.8%…男性の非正規雇用者も457万人増加…内、65歳以上の男性が男性非正規の180万人の増加…全体の非正規の増加の13.5%を占めています。」と説明しています。
「結果として、1336万人増えた非正規雇用者のうち、男性の15~24歳と65歳以上、それに女性が合わせて1136万人と、全体の84.9%も占めています。」と圧倒的に女性の社会参加と高齢者の参加がこの国ベースとなる部分を支えているのです。
これで、「正規雇用が減ったとか、正規雇用が非正規雇用に入り替わったという仮説は否定されます。」と説明されています。女性と高齢者の活躍に感謝しなければなりません。特に45歳以上の女性は、そして定年後の男性が非正規雇用として圧倒的に大きなシェアを占めているのです。
世界的にみると「2022年のデータでは、日本の労働参加率は世界4位まで上がって、大手先進国としてはダントツに高い水準に到達しています。」と紹介しています。(一部加工)
また、「1988年以降、非正規雇用者の数が増加しているのは、主に45歳以上の女性と65歳以上の男性に限られている」おり、「2020年時点で25~54歳の正規雇用率は89.7%」であるとして、「非正規雇用の男性は結婚しにくく、それが出生率が下がる主な原因になっている」という主張は、日本によくある「合成の誤謬」にすぎません。」と看破しています。
「そもそも、世界的に出生率が下がっています。日本の出生率が人口置き換え水準を下回ったのは1974年で、非正規雇用の増加が始まるずっと前からです。世界を見渡すと、最も出生率が低いのが日本も含む東アジアです。これは非正規雇用とは関係がありません。」ともしており、今までの非正規雇用議論の底の浅さに驚いています。
また、労働力不足の中で、「労働参加率が高くなるのは、本来望ましいことです。しかし、…非正規雇用者の多くが低い賃金で…、平均給与や生産性を低下させる要因となっている」と指摘し、「このような事態はいわゆる「年収の壁」が招いていると考えるのが妥当」だと指摘しています。
すなわち、「非正規雇用で働く多くの女性は、扶養控除内で働いています。なぜならば、収入が増えると扶養控除から外れてしまい、手取りの収入が減ってしまい、いわゆる「働き損」の状態に陥ってしまうからで…、女性たちの多くがフルタイムで働くことを避け、非正規雇用を選択するのです。つまり、扶養控除こそが日本における非正規雇用者の増加の主要因なのです。」と結論づけています。
政治家や官僚の皆様が、今までやっていた議論や主張を一旦取り下げて、この国の50年後、100年後ともに働き、ともに豊かな社会を創るために、いま私たち大人が何をすることが必要なのかを考え、軌道修正してもらいたいものです。
私たち老体も、決して自分たちの年金額を護ることをよしとしている訳ではありません。子や孫のためにもうひと働きできるのではないかと思います。