認定支援機関 行政書士たいぞう事務所の小堀大藏です。
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今日は、『亀田制作の経済素描・プラス』(2023年10月27日)でSOMPOインスティチュート・プラス株式会社 プリンシパル兼エグゼクティブ・エコノミスト 亀田制作が書いた「賃上げを伴うインフレは良いことか」~をご紹介します。
まず、亀田氏は、「2年連続の高い賃上げ予想とインフレ率との大小関係」の節で、「来春の労使賃金交渉について、今春並み、場合によってはそれを上回る引き上げ率となる蓋然性が高まってきている」とした上で、次のような理由を列挙しています。
第一は、「物価高が長引いているため、実質賃金確保のために名目賃金の大幅な引き上げが必要というロジックは、今春だけでなく来春も正当化され」ると、説明します。また、第二は、「非製造業も含めて好調な企業利益が続いていることから、歴史的に高い賃上げを2年連続で行う原資は多くの企業にある」としています。
このことは、「利益率の低い中小企業でも、今春同様、人手確保のために賃上げを余儀なくされる先は少なくない」とも予想しています。
労働組合や経済団体トップの発言についても紹介しています。「連合は来年の春闘で、定昇込み「5%以上」の賃上げ要求を行う方針」であり、それに対して、経団連の十倉会長は、「「物価高に負けない賃金引上げ」を目指す中で、「来年も(今年と)同じ熱量で取り組んでいきたい」と発言」と呼応している紹介しています。
当たり前のことなのですが、「一方でこうした賃上げは、既往の物価上昇をフルカバーするほどの高さにはなっていません。」と解説しています。物価が高くなるので、賃金上昇を要求するのであって、また、前年度の実績に対して、次の年の賃金上昇率を決めるのです。当然、いつまでたっても賃金は物価の上昇に追いつけはしないのですが。
「23年度の平均インフレ率(おそらく2%台後半)にはやはり届かないでしょう。」とした上で、「日銀が目標とする2%のインフレ率は定着しないとしても、それよりも低いプラス域で賃金と物価が同時上昇を続ける状態、「賃金と物価の好循環」が日本経済の定常となる可能性は拓けてきています。」と説明しています。
そこで、 「賃金と物価の好循環」です。この言葉の内容について最初に解説しています。
これは、「物価上昇率と賃金上昇率がともにゼロ%である経済より、両者がともに2%である経済の方が前向きの循環が生まれやすい、という考え方です」と説明しています。
よく、岸田首相が使っていますが、しっかりと理解していなかったようにも思います。
また、この言葉は、「デフレ脱却論者の考え方の支柱」であるともしています。さらに「好意的に解釈すれば、デフレ脱却(名目変数の増加トレンドの復活)により経済のダイナミズムが復活すれば、その結果として実質変数にもプラスの効果が及び始める、という主張であると捉えることもできます。」と紹介しています。
「名目値上昇」の経済効果は大きいか?
「名目賃金と物価が同時に上昇する経済(名目値が増加トレンドにある経済)の方が、両者が互いに凍結し合っている経済(名目値が停滞している経済)よりもダイナミックな好循環が起きやすい、という見方に賛同するとしても、重要な問いは残ります。」とした上で、「それは、「そのプラス効果は果たしてどのくらい大きいのか?」という疑問です。」
「この名目値上昇の恩恵を既に受けている…企業部門…とりわけ非製造業のマージン率は、むしろ改善しています(次頁図表2)」と説明しています。
「もっとも、最近の企業行動活性化の理由をインフレ環境だけに求めることも正しくないと考えられます。」とした上で、「足もとの企業利益の改善には、既往のコスト上昇分の国内価格転嫁が進んだことに加え、そのコスト自体が限界的には低下し始めたこと、すなわち交易条件の持ち直しも影響している」と説明しています「実質GNI(国民総所得)は、海外の物価高や円安進行もあって、実質GDP以上に増加…、海外から受け取る所得の多くは直接的には企業部門(グローバル企業の国内部門)を潤している」としています。