認定支援機関 行政書士たいぞう事務所の小堀大藏です。
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今日は、実質賃金をプラスにするために~誰がスカートの裾を踏んでいるのか?~「経済分析レポート」(第一生命経済研究所)経済調査部 首席エコノミスト 熊野英生氏のレポートを取り上げます。
「岸田首相は、…2024年度も高い賃上げ率の実現を経済界に求めている。…実質賃金の伸び率をプラスにするような高い賃上げ率である」しかし、「実質賃金の伸び率は2022年4月からマイナスが続いている(図表1)」と指摘しています。
「第二次石油危機(1979~1983年)が起きた1980年前後の物価・賃金の推移」を取り上げて、実質賃金の伸び率がプラスに転化している理由を、「消費者物価の上昇率が3~4%台に鈍化したこと」と指摘しています。
「当時、日銀は第一次石油危機の教訓もあって、金融引き締めを割と早いタイミングで実施した。1973年に3.5%だった公定歩合を1980年3月には9.0%まで引き上げて、インフレ抑制に動いた。」と解説しています。
「こうした引き締めは、物価抑制に効いて、1981年以降の消費者物価の伸び率を低下させて、結果的に実質賃金をプラスにする結果を導いた。」と結論づけています。
「こうした教訓からは、…、消費者物価の上昇率の側を押し下げなくては、実質賃金の上昇率が上向かないことがわかる」としています。
問題は、日銀の過剰なインフレ容認なのかも知れません。片方で、政府が物価抑制策を勧めているにも関わらず、日銀がインフレ容認、「安定的に2%を上回る物価上昇」を唱えている限り、この矛盾を解決できず、実質賃金がプラスにならない。
前黒田総裁から「実質的に2%以上の高すぎるインフレ率を放置することになっている」とも指摘しています。
「もしも、円安が是正されて、消費者物価が1~2%まで伸び率が鈍化すれば、実質賃金はプラス転化しやすくなる。」とも指摘しています。
他方で、「政府は、物価対策を標榜しながら、実際は1ドル150円前後の円安に対して、日銀が金融緩和の是正を通じて円安修正に動けないように「たが」をはめている。このまま1ドル150円前後の水準が2023年度末まで続けば、円安が12月以降の輸入物価を10%ポイント以上も押し上げられる。」と政府側の矛盾も指摘しています。
「岸田政権は、…さらにそこに物価対策のために過剰な財政出動を行うという2つ目の矛盾が行われている。物価上昇に対して、金融緩和と財政出動で応じるというのは極めて矛盾した状態だ。」と厳しくその問題点を明らかにしています。
また、「実質賃金をプラスにするには、名目賃金の上昇率を2~3%に押し上げる努力もやはり必要だ。毎月勤労統計の現金給与は、7~9月にかけて前年比1%台前半と弱い。…価格転嫁の広がりが実現しにくく、賃上げの原資を十分に稼げなかったとみられる。」と中小企業の実情尾を推測している。「賃上げ率を押し上げていくには、中小企業の価格転嫁問題が壁」とも。さらに輸入物価のために厳しい環境に追いやられているのが実態です。
「繰り返されるコストプッシュ圧力が、中小企業の賃上げの原資を食って、賃上げを遅らせてしまう。そうした点でも、日銀の緩和姿勢を是正することが、実質賃金をプラス転化させるためには必要条件になる。」と的確な指摘をしています。
世の中では、黒田総裁がいなくなれば、今までの考えに固執することなく、新たな政策展開が可能だと期待していましたが、コロナが終わっても、円安によるコスト高、さらにはその後のひずみが日本経済の弱いところに苦しめることになりそうです。
先日、金融庁が、金融機関に対して「事業再生」をするためにそのコンサルタント能力を発揮して中小企業を支援するようにとのお達しを出すとの報道がありましたが、地元金融機関にはそんな余力はまったくありません。政治と金融の迷走はいつまで続くのでしょうか。