認定支援機関 行政書士たいぞう事務所の小堀大藏です。
あなたの事業が成功するために何か役に立つ情報をできるだけわかりやすくお伝えしようと考え、このブログを書いています。
12月23日に「新たな借換保証制度(コロナ借換保証)の創設」が発表されました。この施策の検討された衆議院にある衆議院調査局中小企業金融政策研究会が論文を発表しています。「中小企業金融をめぐる現状及びポストコロナに向けた今後の在り方」(『RESEARCH BUREAU 論究(第19号)2022.12.31』)
この論文を今週は紹介したいと思います。今日は、「Ⅴ ポストコロナにおける今後の中小企業金融への在り方への視座」及び「おわりに」です。
今後の課題や方向性について、まず挙げられたのは「過剰債務問題」です。確かに、中小企業が多く抱えた債務は、目の前のコロナ禍に対応するための後ろ向きの借り入れであり、新規の投資や、新規の事業のための前向きな負債なのです。
東京商工リサーチや大同生命保険が実施田アンケート等で、債務の過剰感が31.7%、借入金の返済見通しに懸念あり17.3%、返済が滞る懸念あり18%など数字が上がり、特に「宿泊・飲食サービス業では、約4割の企業で返済が滞る懸念がある」(大同生命)と似たような数字が並んでいます。
ゼロゼロ融資の3年の据置期間が終了する時期を目の前にして、政府からは新たな借換制度が急ごしらえでスタートしましたが、「大半の貸出しが、据置期間1~2年であるとされ119、2020 年度上半期に集中していたことを踏まえると、現時点で、多くの中小企業が返済を開始していると見られる」」として、「利払負担が急に過重になる可能性は少ないとみられる」としています。
課題としては、今後発生してくる倒産等の動向だとも指摘しています。今年度の期末に向けて明らかに倒産の数字が上がってきており、今までの期間耐えてきたものの、ここにきての企業物価の急上昇や価格転嫁できない環境になってきています。
「このような事業環境の悪化が複合的に重なった場合、業績がコロナ禍前の水準に回復しない企業では、債務の返済原資を捻出することができずに倒産に至る可能性が高まるおそれがある。 また、業績が悪化した企業の市場からの退出は、債務超過を伴う倒産だけではなく、休廃業・解散の形で顕在化する可能性もある。」とも分析しています。
「1995年の阪神・淡路大震災から数年後に倒産が急増した経験のある兵庫県」は、金融機関に補助金を出すなどの新たな支援策を開始しているとの報告もしています。過剰債務から、事業再生や廃業へとシフトしていくことは明らかで、その支援を充実強化すべきともしています。
「低金利の現状においては、「中小企業は返済リスケを通して当面は金利だけ払ってやり過ごした方がよく、金融機関も抜本的な再生に着手するより、金利だけでも払ってもらう方がいいという姿勢になりかねない」との指摘もある。」と東京商工リサーチの記事を紹介している。今般のコロナ借換制度は、モラルを低下させ、本来の事業再生や事業再構築を放棄、先送りする政策で、将来的には、日本のためにならない気がしてなりません。
事業再生支援についても紙面をたくさん割いています。また、再生支援協議会や事業再生ガイドラインもの触れ、この委員会としての姿勢を発表されているのだと思いました。
【おわりに】に書かれている内容のうち、「、今後は、資金繰り支援策を利用したものの過剰債務が解消できない企業や業績が改善しない企業を中心として、経営改善や事業再生に向けた取組が必要になると見られる。企業自身の自主的・抜本的な取組が大前提ではあるが、経営改善や事業再生に向けた取組が単純な延命策や問題の先送りに終始することがないように、適宜適切に政府や金融機関等が関与していくことも重要」としています。
最後に「過大な中小企業支援は、例えば、企業本来の信用リスクを無視した貸出競争を誘発したり、企業の新陳代謝を阻害したりする弊害を生じさせるとの指摘がある」などバラマキを批判する見解も寄せられています。
このような研究会の報告とは全く違う政策が、選挙をにらんだ政治家によって脱されているのを見ると、この国の経済界と政治の癒着が気になりますし、同時に、本当に遅れている国の成長を取り戻す気があるのか、世界に置いて行かれる恐怖さえ感じます。