認定支援機関 行政書士たいぞう事務所の小堀大藏です。
あなたの事業が成功するために何か役に立つ情報をできるだけわかりやすくお伝えしようと考え、このブログを書いています。
今週は、内閣府政策統括官が毎年発表している「日本経済」を紹介しています。このレポートは、令和4年7月に発表された「年次経済財政報告」後の日本経済の現状に関する分析です。
本日は、「第4章 企業部門の動向と海外で稼ぐ力」の第2節、第3節です。
昨日は、第1節の「企業部門の概観」を紹介しました。第2節では、「我が国経済の対外経済構造」を、第3節では、「輸出を通じた海外で稼ぐ力の拡大」を見ていきます。ここが、このレポートの「今後の政策」の部分です。
第2節では、「我が国経済の対外経済構造」を解説しています。
「リーマンショック頃を境に、経常収支の黒字要因は貿易中心から投資中心へと変化」しているとしています。このグラフでは、2010年ごろを境に、海外投資にからの受払によるものが経常収支黒字の要因の中心となっているのです。
また、「貿易収支は、輸入額の増加が輸出額の増加を上回ることで概ね均衡に至っている」とも報告しています。
また、「品目別にみた輸出入の構造は2000年代半ばから大きくは変わらない」と経済構造が変化していないことを指摘しています。食料や鉱物燃料の赤字を輸送機器や一般機械でカバーしている状態です。長いスパンで見ると、かつては、電気機器の貿易黒字もありましたが、今やありません。
2022年に入って、各製造業の活躍はあるのですが、原油や天然ガスなどの輸入価格の高騰で、赤字に低迷しています。
オイルショックを2度も経験しながら、原油に頼る体質や輸送機械や産業機械を当てにする貿易構造は変わっていません。また、世界がサービス貿易にシフトする中で、「世界全体に比べ成長が遅く、特にコンピュータサービス等のデジタル関連の寄与が小さい」と指摘しています。(きょうのブログはとても長いです。興味のある方は続きをお読みください)
貿易収支の改善のためには、エネルギーや食品の輸入と「デジタル取引における環境整備や、デジタル人材育成等を通じた競争力強化が重要」と結論づけています。
また、第一次所得収支の黒字は拡大を続け、「対外純資産は直接投資を中心に増加し、31年連続で世界最大の純債権国」となっているとした上で、「その主因は証券投資収益から直接投資収益へと変化」していると報告しています。
即ち、我が国企業の海外進出が進展により、企業の経常利益を押し上げています。また、最近の円安は受取増に寄与していることになります。
しかし、「海外から所得を稼ぐ力は大中堅企業に偏在」しており、中小企業の活躍は限定的」と課題を提起しています。(海外現地法人企業数は全体1/4、売上高・経常利益は2%台)
さて、最後のテーマです。第3節の「輸出を通じた海外で稼ぐ力の拡大」を読んでいきましょう。
「成長する海外市場の需要を取り込んでいくことは、我が国経済にとって今後も重要な取組」として、いくつかの政策展開を指摘しています。「機械類等の競争力の維持」、「対外資産の収益性確保」、「海外から我が国への直接投資の呼び込み」などです。
この節では、「現状において海外需要の取り込みが十分ではなく、今後の成長余地が大きいと考えられる分野」、「具体的には、中小企業及び農林水産物の輸出拡大」、「インバウンドの回復」を取り上げています。
まず、現状では、「輸出面でも海外で稼ぐ力は大企業に偏在」しており、「大企業に比べ、中小企業の輸出割合は過去10年間で伸びていない」と指摘しています。
「輸出企業は非輸出企業に比べて生産性が高く、研究開発実施率も高い」との分析があります。「輸出を行っている企業と行っていない企業との間に、売上や利益、生産性」を比較すると、輸出企業は、「いずれも非輸出企業よりも大きくなっている」とのデータがあります。
「輸出を除いた分の売上高」「国内売上高でも輸出を行っている企業の方が輸出を行っていない企業を上回っている」とのことです。
経常利益については、「大企業では全産業ベースで約3.5倍、製造業で約2.2倍、中小企業では全産業ベースで約1.9倍、製造業で約2.1倍となっており、売上高以上に輸出企業と輸出を行っていない企業の稼ぐ力に差があることがわかる」と報告しています。
また、「輸出企業の付加価値生産性」についても同様で、「 高い生産性を有するなど稼ぐ力のある企業が輸出を行っており、また輸出を通じて更に稼ぐ力を高めている」と説明しています。さらに、「研究開発実施率」は、「輸出企業では大企業で約7割、中小企業で約6割」となっているとしています。特に、製造業の輸出企業は、「大企業で96%とほぼすべて、中小企業で約7割となっている」と「海外企業との競争環境」との中で頑張っている様子が分かります。
その結果、「売上高や経常利益、付加価値生産性の高さにもつながっている可能性がうかがえる」と輸出企業の可能性を評価しています。
この報告書では、「今後の伸びしろが大きい中小企業の輸出の促進に向け、中小企業が課題を有するマーケティングや人材面を支援することや、海外拠点設置に比べハードルが低いと考えられる、越境ECの活用拡大等が重要」として、支援することを表明しています。
次は「農林水産物・食品の輸出動向」です。
「農林水産物・食品の輸出額は2013年以降堅調に増加」しています。農産物では、ウイスキーや日本酒、あるいは畜産品である牛肉が寄与しています。」「水産物では、冷凍技術が向上したこと等も背景として、調整品を除く水産物の寄与度が高い」と報告しています。
農林省が従来の方針を転換し、輸出をすることを前提に目標値を掲げて動き出しています。「農林水産物・食品の分野では、輸出額が近年大きく増加しており、…アジアを中心に海外の消費者の所得が向上して潜在的な購買層が顕在化、…日本産の農林水産物・食品の魅力が海外に広まったこと等」「…日本産の農林水産物・食品に対するニーズが強い」ことが分かっている」としています。
政府は、「農林水産物・食品の輸出額を2025年に2兆円、2030年に5兆円とする目標」を定めているが、「2021年は初めて1兆円を超え、前年比で25.6%増となるなど、近年でも輸出額が著しく増加した年であったが、2022年はそれを更に上回る見込みである」と報告され、「2025 年に2兆円の目標を前倒しで達成」することを目論んでいるようです。
最後は「インバウンド需要の動向」です。
「堅調に拡大してきたインバウンド需要はコロナ禍で消失」してしまいましたが、ここにきて円安もあり、急激に回復する見込みが見えてきました。「訪日外客数は2012年には836万人、その消費額は1.1兆円に過ぎなかったが、…2019年にはそれぞれ3,188万人、4.8兆円となった。しかし、コロナ禍による国際的な人の移動が制限され」、一挙に海外需要は消失したのです。
今後、「政府は総合経済対策において「訪日外国人旅行消費額の年間5兆円超の速やかな達成を目指し、集中的な政策パッケージを推進する」こととしています。
さて、「今後ののびしろが大きい分野の現状と課題」を取り上げましたが、「中でも、中小企業の輸出で稼ぐ力は、…現状では課題が大きい」としながら、「優れた製品を作り出しながらも生産性や収益力に劣る中小企業にとって、輸出は稼ぐ力を高めるための有力な方法の一つである」とした上で、「中小企業の輸出拡大に向けては、金融機関を含めた認定支援機関等の多様な主体による伴走支援」に期待を寄せています。また、「越境ECの活用拡大等が重要である。」ともしています。
少なくとも、「コロナ禍を乗り越え、我が国経済を民需主導の持続的な成長軌道に乗せていくためには、長年にわたり低く抑えられてきた国内投資の拡大、所得・輸出両面からの海外で稼ぐ力の強化など、本章でみてきた課題に取り組むことを通じて、我が国企業の成長力を引き上げていくことが重要である。」と結論づけています。
日本経済を支える中小企業を元気にするためには、日本の将来を背負う人材の総入れ替えが必要です。世代交代をすることです。かつて、大戦後に駐留軍によってそれまでの経営者が追放され、大きく入れ替わった様に、ドラスティックな変化が必要に思われます。
「本報告書の分析を踏まえると、持続的な回復を実現していくための主な課題は以下の三つにまとめられる。」としています。
「第一に、輸入物価の上昇などによるコスト増の価格転嫁を促し、適切な価格設定が行える環境を整えることである。」
「第二に、個人消費の持続的な回復に向けて、低下傾向にある消費性向の回復と、構造的な賃上げ環境の構築による所得の増加が不可欠である。」
「第三に、企業部門の収益の回復を今後の成長力強化につなげていくための設備投資や、企業が海外で稼ぐ力を高めていくための取組が重要である。」
今週は大変長いブログとなりました。特に今日は。反省しています。基本的なベクトルについてはお示しできたと思っています。この実現を見守りたいと思います。