こんにちは
認定支援機関 行政書士たいぞう事務所 融資コンサルタントの小堀大藏です。
あなたの事業が成功するよう祈って、このブログを書いています。
今週は、オミクロン株の話から、今後問題となるだろう「ゾンビ企業」を取り上げます。
かつて、バブル崩壊の時にも「ゾンビ企業」という言葉が使われ、さらに、リーマンショックの後の中小企業金融円滑化法によって、債務弁済が猶予され、多くの「ゾンビ企業」が生まれたとされています。
金融機関側も本来の与信ではなく、政治的な思惑の中で翻弄され、、小企業から申請が出ればほとんど審査なく「支払い猶予」を可能としたため、本来なら市場から撤退しているはずの企業が生き残り、同時に金融機関の内部の職員の知識も経験も培われるチャンスを失ったのです。
今日は、今年の早い段階で問題提起をしていた東京商工リサーチの「ゾンビ企業って言うな! ~ 「推定30万社」の見直しと企業支援の次の一手 ~」です。
以前取り上げた通り「事業再生ガイドライン」(2022.04.01からスタート)が全銀協と日弁連の肝入れで発表され、私的整理や廃業を想定したうえで、生き残る企業には、しっかりと伴走して対応することが決められました。そのうえで、地方銀行・信用金庫等の社員を再生支援協議会等の公的機関に送り込み教育し、M&Aや事業承継も含んだ支援をしようと動き出しています。
しかし、東京商工リサーチは、「「うちはゾンビ企業でない。抜本再生の必要はない」「ゾンビ企業と言うな」と考える経営者は多い。そうした経営者に伴走支援する金融機関、再生実務家はどう対応するのか。」と問題を提起します。
「ゾンビ企業はどれほどあるのか――」という質問には、色々な回答がありそうです。このコロナ禍で実行された「コロナ融資」による強力な資金繰り支援で、「2021年の企業倒産は6,030社(前年比22.4%減)と57年ぶりの低水準を記録した。」と倒産が激減していることを報告しています。
また、「コロナ禍の2020年は激変した外部環境を前に「あきらめ廃業」が相次ぎ、休廃業・解散は過去最多の4万9,698社を記録」。しかし、「2021年は4万4,377社(前年比10.7%減)に減少した。」とも報告されています。
東京商工リサーチは、「中小企業金融円滑化法(2009年12月)」を取り上げ、「条件変更の実施状況の報告を義務化した同法は、2013年3月の終了までに申込437万件に対し、414万件が実行された」としたうえで、最終的に「金融円滑化法を活用した企業数は約30万社」であったと当時は発表したとしています。
「それから約10年。こうした企業への抜本的対応が出来ぬまま、コロナ禍に見舞われた」と現在の状況を語っています。「東京商工リサーチが2021年12月に実施した企業アンケートによると、…抜本再生の必要性に言及する会社は20社に1社」「借入金の返済について、「懸念がある」と回答した企業は13.1%だった。」とも報告しています。
すなわち、「全国の約358万社の中小企業(経済センサス)を基にすると、単純計算で「抜本再生」を認識する企業は約20万社、返済懸念を抱える企業は約47万社」と分析しています。両者を足して2で割ると、33.5万社となる。金融円滑化法を活用したとされる企業数に近い数値だ。
ところで「国際決済銀行(BIS)は、設立10年超で3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオ(利払いに対する営業利益+受取利息・配当金の比率)が1を下回る企業を、「ゾンビ企業」と定義している。」とし、、「これを基にすると、ゾンビ企業数は23万社程度」と推測している。
なお書きではあるが、「なお、単純に利払いが営業利益を上回る中小企業(設立年問わず)は、1期16.3%、2期連続6.9%、3期連続11.5%だ。合計34.7%は125万社に相当する。金利が上昇局面を迎えた際、企業の「稼ぐ力」が回復していない場合、さらに多くの企業が苦境に陥ることになる」と警鐘を鳴らしています。
ここにきて、アメリカのFRBは金利を上げ続けています。果たして、日本の金融政策はいつ変わるのでしょうか。この秋、しびれを切らして、雪崩を打つように中小・小規模事は倒れてしまうのでしょうか?政治家は?金融当局は?金融機関は?支援機関は?どのような役割分担で、この異常事態を乗り越えていくのでしょうか。