こんにちは
認定支援機関 行政書士たいぞう事務所 融資コンサルタントの小堀大藏です。
あなたの事業が成功するよう祈って、このブログを書いています。
今週は、5月31日に公表された「新しい資本主義の グランドデザイン及び実行計画」を取り上げています。この計画は、6月7日、「骨太方針」と共に閣議決定されました。
今日は、「その3」として「スタートアップ支援」を紹介します。
「第3章 スタートアップの起業加速及びオープンイノベーションの推進 」では、「スタートアップ育成5か年計画の策定」をするとしています。
経済学者のジョセフ・シュンペーターの著書から、「イノベーションの源泉について…新規参入するスタートアップにあるとする見解」と「内部に豊富な資金を抱え、価値を獲得できるプラットフォームを持つ、大企業にあるとする見解」があるが、「その両方が成立する市場環境において、イノベーションが促進される」とし、「イノベーションを促進するには、①スタート アップの創業促進と、②既存大企業がオープンイノベーションを行う環境整備、の 双方が不可欠」としました。
「若い企業(スタートアップ)の方が付加価値創造の貢献率が高い」ことから、「スタートアップの育成は、…社会的課題を解決する鍵」と位置づけ、「5年10倍増を視野に5か年計画を本年末に策定する」としました。その切り口は、羅列になってしまいますが、以下の14項目です。(将来、深堀をしたいと思っています)
①公共調達の活用とSBIR制度(Small Business Innovation Research)のスタートアップへの支援の抜本拡充
②海外のベンチャーキャピタルも含めたベンチャーキャピタルへの公的資本の投資拡大
(ベンチャーキャピタルによる投資額は、米国は36兆円に対し、日本は 0.23兆円)
③個人金融資産及びGPIF(Government Pension Investment Fund:日本の年金積立金管理運用独立行政法人)等の長期運用資金のベンチャー投資への循環
2,000兆円に及ぶ日本の個人金融資産+GPIF等の長期運用資金 ⇒ ベンチャー投資やインフラ整備へ
④優れたアイディア、技術を持つ若い人材への支援制度の拡大
「優れたアイディア、技術を持つ若い人材を選抜して支援する…情報処理推進機構(IPA)…規模が限定的 ⇒ 国家レベルの支援に拡大」
⑤スタートアップが集積するグローバル・スタートアップ・キャンパス
内外の大学の誘致 ⇒ スタートアップが集積するキャンパス作りを推進
⑥創業時に信用保証を受ける場合に経営者の個人保証を不要にする等の制度の見直し
創業時の新しい信用保証制度を創設 ⇒ 金融機関が個人保証を徴求しない創業融資の促進措置+経営者保証に依存しない融資慣行の確立」
⑦IPO(Initial Public Offeringの略語「新規公開株」)プロセスの改革実行とSPAC(Special Purpose Acquisition Companyの略で未公開会社の買収を目的として設立される法人)の検討
日本の「IPOによる起業家の資金調達額が相対的に小さい。…IPOプロセスの見直し…証券業界や競争当局による改革を実行。SPAC(特別買収目的会社)に関しては、投資家保護に十分に配慮しつつ検討」
⑧事業化まで時間を要するスタートアップの成長を図るためのストックオプション等の環境整備
「ディープテック(科学的な発見や革新的な技術に基づいて、世界に大きな影響を与える問題を解決する取り組)、グローバル展開の…スタートアップを後押し」
⑨社会的課題を解決するスタートアップの環境整備として法人形態の在り方の検討
いわゆる社会的起業家の 起業をサポート ⇒ 民間で公的役割を担う新たな法人形態の創設
⑩従業員を雇わない創業形態であるフリーランスの取引適正化法制の整備
フリーランス 462万人と増加 ⇒ 相談体制の充実 + 取引適正化法制度
⑪未上場株のセカンダリーマーケットの整備
スタートアップが非上場のまま、…証券取引所を通さず、…私設取引システム (PTS)において、…非上場株式を取り扱う…制度整備(プロ投資家向け)
⑫海外における起業家育成の拠点の創設
シリコンバレー等に拠点 ⇒ 起業を志す若手人材を受け入れ、…起業家育成プログラムを提供
⑬起業家教育
産業界の協力を得て、…初等中等教育等における起業家教育を推進 + AIやディープテックの活用…起業家教育を横展開(高等専門学校・大学)。
⑭スタートアップ・大学における知的財産権の戦略の強化
スタートアップが大学の知的財産権を事業化する環境整備 ⇒ 大学の国際特許出願に対する支援強化、共有特許ルールの見直し、大学による株や新株予約権の 取得に際しての制限の撤廃等を進める。
次に、「付加価値創造とオープンイノベーション」ですが、これは、「既存企業について、売上重視から、新たな付加価値を創造する視点への転換を図る」ことを目指しています。
優良企業な既存企業とスタートアップ企業の新技術のコラボレーションで、オープンイノベーションを起こし、「経営不振の事業から撤退し、経営資源を成長性、収益性の見込める事業に投入して、新陳代謝を進めていくことが重要」との認識です。いわゆる事業再構築とスタートアップの両方を後押ししたいとのことです。 以下の5項目です。
①事業再構築のための私的整理法制の整備
日本企業の債務残高は、コロナ禍前に比べ、70兆円以上増加…債務の過剰感…コロナ後に向けた我が国企業の事業再構築を容易にするため、新たな事業再構築のための法制度
(中小企業活性化パッケージに基づき、全国3万以上の認定支援機関による伴走支援 +経営者の退任を原則としない…事業再生を推進)
②既存企業のオープンイノベーションの推進のための税制等の在り方やルールの見直し
事業会社によるスタートアップ企業に対する投資額は、…欧米と比べて極めて低い水準
スタートアップに対するM&Aの件数も、…極めて少ない ⇒ オープンイノベーションを促進するため、税制等の在り方を…再検証…見直し(日本証券業協会の自主規制がM&Aを実行するための公募増資を制限)
③企業経営改革(マークアップ率向上、国際競争力向上)
コストカットにより、いかに安く売るかではなく、新製品や新サービスを投入し、付加価値をつけて適正な価格で売るという価値観を国内に広める ⇒ 日本企業の(生産性)マークアップ率と国際競争力の向上
④長期的視点で投資ができる企業環境の整備
価格競争による過当競争で短期的な収益を得ようとする企業行動から脱却 ⇒ 重要分野への集中的な投資や研究開発( + 投資家との コミュニケーションの円滑化を図るため、開示制度の充実を進める)
⑤ディープテック系スタートアップとのオープンイノベーションの促進
国による支援は実績作り + 大企業とのオープンイノベーションの促進 取組をディープテック系スタートアップ等で進めていく。