認定支援機関 行政書士たいぞう事務所の小堀大藏です。
あなたの事業が成功するために何か役に立つ情報をできるだけわかりやすくお伝えしようと考え、このブログを書いています。
今週は、日本銀行ワーキングペーパーシリーズの「我が国の賃金動向に関する論点整理」(以下「論点整理」という)を深読みします。
ここにきて、物価上昇と賃金アップの話がやっと動き出しましたが、バブル崩壊後の30年間、当たり前のように賃金が上がらず、その理由を知らないままにきていた気がします。
最近の色々な論文が出てきて、確かに、欧米では確実に上がっている賃金が日本では上がらず、今や隣の韓国にも追い抜かれている状況です。
今日は、その「実態を確認」します。また、明日は、「コロナ前から日本の名目賃金を上がりにくくしていた様々な要因」を、明後日は、「それらの要因がコロナ以降にどう変化しつつあるか」を、4日目は、「今後の 賃金上昇ペースを展望するための論点」を確認します。最終日は、再度整理したうえで、「重要な論点」を整理してみます。
「論点整理」では、「2022 年秋の時点において、わが国の名目賃金は、新型コロナウイルス感染症の拡大(以下「コロナ」)によって落ち込んだ経済活動が持ち直していることを反映して緩やかに増加しているが、エネルギー価格などの上昇によって伸びを高めている消費者物価と比べると、低い伸びにとどまっている。」と評価しています。
その上で、「日本銀行も、賃金の上昇を伴う形で、「物価安定の目標」が持続的・安定的に達成されていくことを目指している。」と注目していることを表明しています。
「論点整理」では、「日本のマクロ的な賃金動向を評価・展望するうえでの論点を整理する。」として、「労働市場には、就業形態、労働者の属性、企業側の属性などの違いに応じて様々な側面がある。…労働市場の様々な側面を選択的にみていく」と一歩踏み込んでの分析をするとしています。
まず、「日米欧の 2000~2019年(コロナ前まで)の賃金・物価動向を比較すると(図表 1)、日本 では名目賃金と物価の伸びが共に低い状況が続いてきた。」として、以下のグラフを提示してます。
「米欧では名目賃金の伸びが物価の伸びを概ね上回っていた(実質賃金が伸びていた)のに対し、 日本ではそのような関係はみられなかった。」と分析しています。
「1980 年以降のデータを用いて、日米欧の名目賃金を、それぞれ物価、労働生産性、労働需給に関する変数によって説明する関数(物価と労働生産性を加えた賃金版フィリップス曲線)を推計すると(図表 2、推計方法の詳細は補論1)、日本については特に 2010年代に、推計期間中の平均的な関係を示す関数推計値を実績値が継続的に下回っており、名目賃金の上がりにくい状況が続いていたことが確認できる。」とも評価しています。
確かに、図1における日本のグラフが異常なのは、物価VS賃金よりも、物価がマイナスの中で推移しているいわゆるデフレの経済であったことが確認できることです。同時に、名目賃金が、物価を下回っているのに、賃金を上げるような動きが抑制されているようにさえ見えます。ここには、我が国の「構造的な」理由がありそうです。