認定支援機関 行政書士たいぞう事務所の小堀大藏です。
あなたの事業が成功するために何か役に立つ情報をできるだけわかりやすくお伝えしようと考え、このブログを書いています。
今週は、日本銀行ワーキングペーパーシリーズの「我が国の賃金動向に関する論点整理」(以下「論点整理」という)を深読みします。
ここにきて、物価上昇と賃金アップの話がやっと動き出しましたが、バブル崩壊後の30年間、当たり前のように賃金が上がらず、その理由を知らないままにきていた気がします。
最近の色々な論文が出てきて、確かに、欧米では確実に上がっている賃金が日本では上がらず、今や隣の韓国にも追い抜かれている状況です。
今日は第2節です。「コロナ前から日本の名目賃金を上がりにくくしていたと考えられる要因を、以下の4つのグループに分類し、それぞれの要因について、米欧との比較も意識しつつ、先行研究や筆者らの分析を紹介しながら確認」しています。
(A) 家計の労働供給、労働市場の二重構造
(B) 企業の労働需要・賃金設定行動
(C) 業種別の要因、雇用流動性
(D) 低インフレの定着
また、「これらの要因は必ずしも独立したものではなく、グループ間を跨いで連関している。…また、(A)(B)(C)の各要因は、理論上は実物的な要因と整理されることが多く、名目的な要因である(D)とは切り離されているようにもみえるが、労働市場全体の需給バランスと名目賃金を関係づけるフィリップス曲線を通じて、名目賃金にもつながっていると考えられる。」とも追加的に説明しています。
「(A)家計の労働供給、労働市場の二重構造」では、「1990 年代以降、日本のパート労働者比率は継続的に上昇」をあげて、「同時期の米欧ではみられない現象」と指摘しています(図表 3)。また、この間においても、「一般・パート労働者間の賃金格差は…米欧と比べると依然大きい(図表 4)。 」と分析しています。
「論点整理」では、「このように賃金の相対的に低いパート労働者の比率が上昇を続けたことにより、 一般・パート労働者を合わせた平均賃金は、両者の賃金がそれぞれ上昇していた 時期も含め、継続的に下押しされてきた(図表 5)。」と結論づけています。
「(B) 企業の労働需要・賃金設定行動」では、「日本企業は、固定的な人件費だけでなく、人的資本投資も抑制しており、このことが労働生産性のさらなる低迷につながるという悪循環に陥っていた可能性も考えられる。」と指摘しています。
「日本企業は製品市場の厳しい競争環境のもとで価格マークアップ率を圧縮する一方、労働市場においては賃金マークダウンによる賃金抑制傾向を強めることで、利潤の確保を図ってきたことが示唆される。」と分析しています。
「(C) 業種別の要因、雇用流動性」では、「米国と比べると、日本の製造業の賃金の全業種平均賃金への波及度合いは小さめとなっており、上述のマクロ的な波及メカニズムが十分に作用していない可能性が示唆される。業種間での賃金の波及の弱さは、雇用の流動性の低さとも関係している可能性が考えられる。」と説明しています。
「もっとも、業種間や企業間で雇用の流動性が高まれば平均賃金の上昇につながるかどうかは、必ずしも明らかではない。」として、雇用の流動性と賃金アップの単純な連動性には懐疑的なようです。
なお、「(D) 低インフレの定着」においては、「低インフレ(ないし緩やかな デフレ)が定着するもとで、2000 年頃からは賃金のベースアップがほとんど実 施されなくなった。」と指摘しています。
一体、日本は、この間、何をやってきたのでしょうか?政府も、企業も、あるいは労働組合もこの実態を知りながら、何を分析し、どんな資本主義を作ろうとしてきたのでしょうか。
いまさらながら、日銀の黒田総裁が2%成長を謳って、打ってきた政策について、これらの分析が十分に行われていたのか疑問です。ここに「優秀な日銀の頭脳」があるのにと思ってしまいます。
賃金を上げ、世界に挑戦できる分的投資、人材への投資を政府が主導して、国家としての強い決意で現状のグラフからGOALを想定して、国民を引き上げなくてはなりません。かつて、戦後に企図したように、魅力的な国づくりをしなくてはなりません。世界中の若者が集まるような国にしたいものです。