認定支援機関 行政書士たいぞう事務所の小堀大藏です。
あなたの事業が成功するために何か役に立つ情報をできるだけわかりやすくお伝えしようと考え、このブログを書いています。
今週は、日本銀行ワーキングペーパーシリーズの「我が国の賃金動向に関する論点整理」(以下「論点整理」という)を深読みします。
ここにきて、物価上昇と賃金アップの話がやっと動き出しましたが、バブル崩壊後の30年間、当たり前のように賃金が上がらず、その理由を知らないままにきていた気がします。
今日は、ポストコロナを迎え、「今後の日本の賃金上昇のペースや持続性を展望するうえで重要と考えられる論点」の4つについてご紹介します。
(A)労働市場の二重構造のもとでの賃金の先行き
「具体的には、対面型サービス等の特定の業種、中小企業、若年層などの賃金に、労働需給等を反映した 変化の兆しが窺われる。」としています。また、「若年層の賃金 上昇率は3%程度までのプラスの領域に広く分布している。」とその変化を指摘しています。
(B)企業の成長期待
企業の成長期待については、「上記で算出した個別企業の期待成長率の分布をみると、大企業でも中小企業 でも、期待成長率の高い企業ほど名目賃金上昇率も高いという緩やかな正の相 関関係がみられる(図表 40)。」
また、「動学的な関係をみるため、各企業の期待成長率、労働生産性上昇率、名目賃金上昇率を内生変数とするパネル・ベクトル自己回帰モデル(VAR)を推計し、期待成長率を押し上げるショックに対する名 目賃金の反応をみると、特に大企業において、名目賃金が持続的に上昇すること が確認された(図表 41)」と報告しています。詳細について補論で説明されています。
(C)スキルアップを通じた労働移動の円滑化
「日本経済全体として追加的な労働供 給余地が低下していくもとで、限られた労働資源を適切に配置することの重要性は一段と増していくと考えられる。」と長期視点を指摘しています。
また、「こうした観点からは、企業の内外でスキルアップを通じた労働移動が円滑に 行われるようになるかどうかが重要なポイントとなる。一部の企業では、より生 産性の高い部署や担当業務に配置転換するために、社員に新たなスキルを身に 付けさせる「リスキリング」に注力する動きがみられる。」と新たな動きを紹介しています。
(D)物価と賃金の相互関係
「賃上げが抑制されていた状況が変わり、物価と名目賃金が以前のように共に上昇していくかどうかも重要なポイントである。」と指摘したうえで、「足もとの賃上げ交渉では物価上昇への意識が高まっており、物価から賃金への波及の強まりが期待される。」としました。
他方で、「現在の日本では 低インフレのノルムが根強く残るリスクがあることも踏まえると、賃金から物価への波及も、一定程度は今後の持続的な物価安定に資すると考えられる。」と日本銀行らしい指摘もあります。
また、「推計結果からは、現在の日本では、従来の物価と名目賃金の相互関係が維持されている限り、二次的波及効果を通じた物価と名目賃金のスパイラル的な上昇のリスクは限定的と評価される。もっとも、物価と名目賃金の相互関係については、どのような要因(低インフレのノルムの変化など)によってどのように変わるか分かっていない点も多く、様々な角度から注視していく必要がある。」とまとめています。