
認定支援機関 行政書士たいぞう事務所の小堀大藏です。
あなたの事業が成功するために何か役に立つ情報をできるだけわかりやすくお伝えしようと考え、このブログを書いています。
今週は、内閣府政策統括官が毎年発表している「日本経済」を紹介します。このレポートは、令和4年7月に発表された「年次経済財政報告」後の日本経済の現状に関する分析です。
「刊行にあたって」では、「今回の報告書では、2022 年の日本経済の動向を中心にコロナ禍からの回復を振り返るとともに、物価上昇下における家計、企業の 動向や課題を分析しています。」と、村山統括官が、その位置づけを示しています。
国会の論戦は、ウクライナ問題、防衛費の増額、少子化問題などに焦点が当たり、今年の日本経済については、よく見えていません。政策担当者が何を考えているのかを今週は見ていきたいと思います。
2022年度の日本経済に対しての基本的な認識は、「2022 年の日本経済は、春にまん延防止等重点措置が解除されて以降、…多くの需要項目でコロナ禍前水準を回復…。年後半には、…サービス消費も持ち直してきている。」です。
まず、「第1章 世界経済の不確実性の高まりと日本経済の動向」では、世界経済の不確実性が高まる中、日本経済は、「民需中心に緩やかな持ち直し」と「40年ぶりの高い物価上昇」があり、「交易条件改善、サービス輸出拡大が課題」となっていると指摘しています。

また、物価上昇の理由を「輸入物価上昇を背景」とし、「国内需給や賃金による上昇圧力は限定的」としています。他方で、「輸入物価上昇の転嫁は途上」と評価しています。まだ、その物価上昇の影響は隠れているとの評価でしょうか。さらに、「賃上げ原資の確保にも、企業が適切に価格転嫁を行える環境整備が重要」であると指摘し、中小企業、小規模事業者の決して良い状態でない実態を指摘しています。

今後の見込みは、「2023年の世界経済は減速が懸念」されるとし、日本経済は「内需振興」、「成長分野への重点的な投資喚起」、「人的資本投資の促進」などが政策の「鍵」であると指摘しています。また、「中長期の持続的な成長には、貿易や投資関係強化による海外需要取込みが重要」であるともしています。これは、少し抽象的な指摘に見えます。
次に「第2章 個人消費の力強い回復に向けた課題」においては、「実質所得の減少」の中で、「物価上昇の影響が大きい低所得層への重点的な支援が重要」と指摘しています。

コロナによって抑制されていた今後の消費が「一定の消費下支え効果が期待される」が、「効果は限定的」と評価しています。すなわち、「消費の持続的な回復には、ベアなどによる定期収入の増加が鍵」であると指摘しています。その通りだと思います。
また、「2010年代以降、若年層と高齢層を中心に消費性向は低下傾向」と分析した上で、「若年層では…生涯所得…や老後の生活不安」、「高齢層では予備動機(使わないでとっておこうという意識)や遺産動機(遺産のために残しておこう)の高まり」を指摘しています。「賃上げ環境の構築に加え、高齢者の就労促進や社会保障制度の持続性を高める取組が必要」と指摘しています。年金所得者やサラリーマンの妻などに対する「労働を抑制する」制度設計にメスを入れる必要を強く感じます。


失業に関しては、「2022年の雇用環境は総じて改善」とした上で、「労働移動はコロナ禍前ほど活発ではなく、失業期間の長期化が懸念」されるとネガティブな指摘をしています。
世界を見ると「国際的には、労働移動が円滑な国の賃金上昇率が高い。」と指摘したうえで、「自発的な転職には賃金や意欲の上昇効果がみられ、人材配置の適正化を進めるためのリスキリングの強化やマッチング効率の改善などが課題」として、すぐには改善できない将来の課題としているように見えます。
最後の「第3章 企業部門の動向と海外で稼ぐ力」においては、「2022年は製造業のけん引により収益の回復が持続し、円安による収益増などもあり設備投資は大中堅企業中心に回復」と指摘しています。「一方、実質ベースでの投資の回復は道半ば」と指摘し、景気回復に結びついていないと分析しています。
「今後は官の投資を呼び水として、成長分野での企業の予見可能性と期待成長率を高め、投資を引き出すことが重要」と、政策投資を起爆剤にすることを期待しているようです。
経常収支については、「リーマンショック以降の経常収支黒字要因は、貿易中心から投資中心に変化」してきていると指摘し、原油や天然ガスなどの「鉱物性燃料価格の影響が大きく、エネルギー構造転換が重要」だとも指摘しています。なお、「直接投資は、投資先国の成長を背景に収益率が高く、残高も増加基調」出ると報告しています。
そこで、「海外で稼ぐ力を規模別にみると、現地法人の売上や収益に加え、輸出金額も大中堅企業に偏在」したままであると分析し、今後は、「輸出の伸びしろが大きい中小企業への人材面などでの支援や、農林水産物・食品の輸出支援体制の整備が重要」として、従来の大規模の製造業の輸出から、中小企業や農林水産物、食品への期待があることを表明しています。